2006年1月よりアメリカ国内で販売される食品に表示義務化されて以来、「トランス脂肪酸」が話題になり、それを含む「マーガリン」は体に悪いものというイメージがすっかり定着しました。そんな世論から企業努力が進み、業界では新しいマーガリンが登場し、エナジーオーツスナックで使用しているマーガリンも、トランス脂肪酸を含まない新しいタイプのものとなっています。
ただ、トランス脂肪酸は自然界でも存在するもの。それに、バターと比べれば植物油だから飽和脂肪酸やコレステロールは少ないし、使いやすいし、安価だし・・・そんなに「悪者」なのでしょうか。この脂肪酸とマーガリンについて考察しました。
トランス脂肪酸とは・・・
加工油脂や、牛などの反芻動物の脂肪に含まれている脂肪酸(不飽和脂肪酸)の一種です。 不飽和脂肪酸には炭素間に二重結合がありますが、ここの炭素についている水素が同じ方向についているのがシス型、水素が互い違いになっているのがトランス型となります。
トランス脂肪酸の体への影響
過剰摂取すると、心筋梗塞などの冠動脈疾患を増加させる可能性が高いと指摘されています。世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるという目標を示しています。米国、デンマークなど摂取量が多い国で、含有量の規制や表示が義務づけられ、その影響で日本でも10年ほど前から表示の議論が起こり、食品安全委員会が日本人の場合の健康影響を調べるなど、注目を集めるようになりました。
マーガリンの誕生とトランス脂肪酸ができる過程
マーガリンが開発されたのは人口の増加に加え軍需用のバター需要が増え、深刻なバター不足状態に陥っていた1869年。当初は牛の体脂肪由来でした。その後ドイツの化学者ヴィルヘルム・ノルマンが1901年、植物油脂に水素付加をすることで常温で固形化させる実験に成功し完全植物性となりました。バターより低価格、動物性脂肪より「ヘルシー」というイメージで販売数を大きく伸ばしたマーガリンでしたが、この水素付加によりシス型がトランス型に変化し、トランス脂肪酸ができるということで、現在また「NOTヘルシー」なイメージが定着しています。
「悪者」になったマーガリン
アメリカでは2000年代前半からトランス脂肪酸への規制が進み、2015年には部分水素添加油(半硬化油)が禁止されました。これを受けて、マクドナルドやKFCといった大手飲食チェーンは一斉にトランス脂肪酸を含む油の使用をやめています。
これは、アメリカのトランス脂肪酸規制には全米酪農協会という強力なロビー団体の圧力によるものとされています。彼らは酪農業者、マーガリンのライバルであるバターの生産者からなる団体です。
バターには心血管疾患や糖尿病と関連性があると指摘される飽和脂肪酸が含まれているのですが、こちらについては規制がないし、牛などの反芻動物の第一胃内でバクテリアにより、バイオ水素添加が行われ、一部トランス脂肪酸が生成されるため、トランス脂肪酸は自然界にも存在するのですが・・・。
と、このトランス脂肪酸(マーガリン)規制は多分に政治的な問題ですね。
日本では、特にトランス脂肪酸への規制は行われていません。日本人は「平均値で総エネルギーの0.3%とWHOの目標である1%を下回っている」ため問題はないとしています。
食べ過ぎは危険ですが適量摂取であれば全く問題がありません。リスクがゼロになるに越したことはありませんが、「マーガリン=危ない食品」というのは極端な見方と言えます。マーガリンはバターに比べれば、コレステロールや中性脂肪が少なく、体内では生成されないリノール酸やα-リノレン酸が含まれていたり、血中コレステロールを下げる効果のあるとされるフィトステロールを含んでいるなどの良い点も挙げられます。食べ過ぎが危険なのは何もトランス脂肪酸だけではないですよね。要は「バランス」です。偏りのない食事を心がけていきたいものです。
トランス脂肪酸を含まないマーガリン
悪者扱いにされるマーガリンも頑張っています。使用する植物油脂や反固形化・固形化の温度の調整により、水素付加なし、トランス脂肪酸を発生させずにマーガリンを作れるようになりました。エナジーオーツスナック ではそんなマーガリンを使っていますので、商品自体トランス脂肪酸の含有量は0となってます。
*ちなみにトランス脂肪酸を避けるにしても、食卓のマーガリンだけを気にするのは、的を射ていないようです。食事調査による日本人のトランス脂肪酸の摂取源をみると、マーガリンよりも、菓子類、パン類、油脂類(つまりショートニング)の方が大きな割合を占めています。(出典:Yamada M,et al. Estimation of trans fatty acid intake in Japanese adults using 16-day diet records based on a food composition database developed for Japanese population. J Epidemiol 2010;20:119-27)